公益社団法人 日本スカッシュ協会

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2022.12.16

ナショナルチーム

2022女子世界選手権団体戦大会レポート⑧ 大会6日目 

日本チームの最終日となった大会6日目、順位決定戦の最終戦が行われました。
ここまで2連勝で日本暫定9位、次に南アフリカとオーストラリアが同率10位となっています。
今日の結果次第で9位から11位まである展開となっていますが、勿論てば文句なしの9位なので総力戦で南アフリカに挑みました。
 
今日のオーダーと試合順は佐野⇒渡邉⇒杉本です。
まず先勝して流れに乗りたい日本チームはここまで出場試合全勝でコンディションも良い佐野で勢いをつけてもらうよう託しました。
対戦相手はHayley Wardでランキングこそ324と低いですが侮れない選手でした。
昨日のスイス戦も快勝した佐野でしたがそこで修正テーマに上げていた「ミスの数」を意識しながらの序盤、過去のプレーでは見られなかったドライブ主体の展開で相手を後ろに下げてドロップでフィニッシュするシンプルなゲームメイクで2ゲームを危なげなく取ります。
相手のペースが上がる3ゲーム目、序盤から予想通り相手のペースがあがり対応が遅れたのはもったいなかったと思います。ただ、この時点ではまだ佐野に余裕はあったので修正可能な状況だと思っていました。そして問題の4ゲーム目、開始からギアを上げフロントコートでのウイニングも良く取れていました。順調に得点を重ねて8-2くらいまで来た時にふいに打ってしまうボーストやレシーブミスが出始めた時に空気が変わる感じがしました。
まさに勝負の潮目が変わる瞬間ですね。
自分も長い事スカッシュをプレーして見てきましたが、こうなるとズレた歯車を戻すのは本当に大変というか、止められない大波に飲み込まれる勢いで失点を重ねます。
勿論、佐野自身必死に状況を変えようとしているし、メンバーの応援も何とか佐野の背中を押そうと必死になりましたが、このゲームと最終ゲームを接戦の上落とし逆転での敗戦となりました。あれだけ1,2ゲーム目にミスの数が平均3つと少なく出来ていたのに、後半は6つと11ポイントを争う競技で半数以上献上するゲームメイクはこのレベルだと命取りになることを痛感させられましたね。
佐野の今後の一番修正すべき箇所だと思います。
 
後がなくなって、尚且つ勢いづく南アフリカに対し、僕が渡邉に求めたのは絶対的な力差を見せつけての勝利です。試合前から南アフリカも今大会ここまで1番手で無敗の渡邉に負けることは想定していると思います。ただ勝つだけではダメだし、少しでも競るものならば負けても勢いづけてしまうので、ベンチの火を一旦消さないといけないと思って話をしました。
そうは言っても相手も国を代表する1番手プレイヤーですから、そんなに上手くは…と心の奥底の端っこの隅くらいで思っていましたが、まさか、いとも簡単にやってしまうとは…圧巻です。3ゲームを通じて渡邉がしたミスの数は2つ、奪われた点数は5点と完ぺきな試合展開でした。
これにて渡邉は出場6試合全て勝利と文句なしの成績でチームに貢献してくれました。
 
各国の1番手との対戦になる世界選手権で全勝とは本当に限られた選手しかいませんし、数字以上にとんでもない事を平然とやってのけてしまうのですから、近くで見ている我々でさえ驚くばかりです。
間違いなく日本のエースであり柱ですし、世界の強豪国も渡邉の動向には注視するくらい警戒されていることは本当にすごい事だし、2年後のTOP8入りが本当に現実に見える状況だと思えました。
全試合ハードワークでしたが本当にお疲れ様。ありがとう!
 
そして試合の勝敗がかかるディサイディングマッチに今大会好調を維持している杉本が登場です。
直前の渡邉の試合により、予定通り南アフリカのベンチの雰囲気はリセットされていて、お互い長いラリーをきっちり展開する物静かな状況でスタートします。
相手のLizelle Mullerはレベルの高いドライブラリーを武器にバランスよくフロントコートをおり混ぜてくる選手で序盤から長いラリーが続きました。杉本の状態も悪くなく相手のミスもあり中盤まで競ることは出来たのですが、要所を締められてしまい1ゲーム目を落とします。
続く2ゲーム目、本人もペースを上げようと意識してしっかりギアを上げ、得意のドライブのクオリティも足を動かし続ける事で
どんどん上がっていきバックサイドのストレートとフォア前のコンボで効率よく得点できていました。
ゲームカウント1-1で今後の流れが決まる3ゲーム目。2ゲーム目と同様にペースを上げてキープしたい杉本でしたが、疲労感からなのか中盤からミスの数が一気に増えてしまい、善戦するも相手に流れを与える流れになってしました。
後がなくなった4ゲーム目、気力を振り絞り最後まであきらめずに戦った杉本でしたが、最後は疲労感と相手の地力に押し切られる形で敗戦となりました。
 
これにより、南アフリカが勝敗数で日本に並び、チームの勝利数で南アフリカに届かず南アフリカが9位、勝敗、勝利数も一緒となった日本とオーストラリアは得失ゲーム数で1ポイント日本が上回り、シード順位から1つポジションアップし、史上最高順位の10位で大会を締めくくりました。
 
今日の試合、出場のなかった緑川ですが、最後の最後まで大きな声でチームを鼓舞してくれましたし、昨日の難しい試合で獲得してくれた1ゲームがあったからチームのポジションが変わりました。
 
本当にありがとう。
 
今回のチームは先月にアジア選手権があり、短期間で再度集まれたことでコミュニケーションが自然と密に取れていて、前回のミーティングで話したことを選手たちが率先して意識してくれた事で本当に良い雰囲気で戦ってこられたと思います。
特に渡邉は言う事ないくらいエースの役割を全うしてくれましたし、緑川は6連戦を戦い抜いてくれたことでチームのスタミナを最後まで繋いでくれました。
杉本はチームの中では一番代表経験が豊富な事から試合も生活面でもチームをサポートしてくれていました。
佐野は豊富な人脈から各国の選手の情報やチームに溶け込もうとしてくれる意識がさらに高くなったことで選手間のパイプ役としても良い空気感を出してくれていたと思います。
 
本当にスタッフとしては一人で行っている分、選手達に少なからず負担やストレスを与えているのではないかと思うこともあるのですが、今大会は選手の皆に凄く支えてもらいながら戦ってこられたと思います。この場を借りて心より御礼申し上げます。
 
ただ、目標はここで終わりではありません。
 
2022年の日程はこれで終わりますが、迎える2023年はメインとなるアジア競技大会の年です。
前回大会で日本は女子チームが初の銅メダルを獲得。そこから4年が経ち、メンバーも目標も新たなものになっています。
これから怒涛の代表争いと本大会での結果が求められるので選手たちは本当に勝負の年になるのではないでしょうか。
各選手が今回の遠征で得たもの、感じたこと、反省点をしっかり整理して来るべき時まで準備をしてほしいと思います。
 
チームマネージャー兼コーチ
松本淳
 
<試合結果>
日本対南アフリカ
佐野 lost to Hayley Ward 2-3
渡邉 beat Alexandra Fuller 3-0
杉本 lost to Lizelle Muller 1-3
 
※この事業は、競技力向上事業助成金を受けて実施されています。

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